【経営者必見】「残業代ゼロ」が危ない!36協定が及ばない「管理監督者」の正しい運用と法的リスク

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御社の「管理職」は本当に「管理監督者」ですか?

 

多くの経営者様が、管理職に残業代を支払わない運用をされているかと思います。その根拠となるのが、労働基準法で労働時間・休日規制が適用除外とされる「管理監督者」の規定です。

しかし、この「管理監督者」の定義を誤って運用している場合、労働基準法違反となり、過去の未払い残業代請求(最大2年分、将来的には3年分)や、企業のブランドイメージ失墜という甚大なリスクに直面します。

本記事では、経営者の皆様がリスクを回避し、法令を遵守しながら組織を強化するために、36協定の対象外となる人、特に「管理監督者」の正しい判断基準と、今すぐ取るべき対策を解説します。


 

1. 36協定の適用除外者がもたらす経営上のリスク

 

まず、36協定(時間外労働の上限規制)の対象外となる主な労働者と、その運用上の注意点を確認しましょう。

対象外となる労働者 適用除外の根拠 経営者が注意すべきリスク
管理監督者 労働時間・休憩・休日規制の適用除外(労基法41条2号) 「名ばかり管理職」による未払い残業代請求リスクが最大
18歳未満の年少者 時間外労働・深夜労働が原則禁止 1分でも法定外労働をさせれば労働基準法違反となる
妊産婦・育児介護者 請求があれば時間外・深夜労働は禁止 請求を拒否した場合、法的な義務違反となる
業務委託・請負の個人事業主 そもそも労働者ではない 業務指示が詳細すぎると**「偽装請負」**と見なされ、労働者として扱うリスク

この中でも、最も多くのトラブルを生んでいるのが「管理監督者」の取り扱いです。


 

2. 「管理監督者」と「名ばかり管理職」を分ける3つの壁

 

労働基準法における「管理監督者」は、会社が恣意的に決める役職名ではありません。**「経営者と一体的な立場」**にあるかという実態で判断されます。

御社の管理職が法的な「管理監督者」として認められるには、以下の3つの要件すべてを満たす必要があります。一つでも欠けていれば、その方は36協定の規制を受ける一般労働者であり、時間外労働や休日労働の割増賃金を支払わなくてはなりません。

 

① 重要な職務内容と権限(経営への関与度)

 

  • 経営方針や人事に関する権限:経営戦略会議への参加、採用・解雇・人事考課(評価)に関する決定権、または強い影響力があること。
  • 権限の行使:自らの裁量と責任で事業計画を遂行・変更できること。単に上司の命令を部下に伝えるだけの「伝達役」は認められません。

 

② 勤務時間に関する自由裁量

 

  • 出退勤の自由:会社の厳格な時間管理を受けず、業務の都合で出退勤時刻を自分で決められること。
  • 時間的な拘束の有無:遅刻や早退を理由に一般社員と同様の減給や不利益な扱いを受けていないこと。

 

③ 地位にふさわしい待遇(経済的な優遇)

 

  • 給与の優位性:役職手当や基本給を含めた年収が、残業代が支払われる一般社員と比較して、管理監督者という地位にふさわしい十分な優遇がなされていること。
  • リスクの視点:一般社員が残業した場合に支払われる賃金総額を下回る場合は、**「名ばかり管理職」**と断定され、未払い残業代請求のリスクが極めて高くなります。

 

3. 経営者が今すぐ取るべき管理監督者の「適正化」対策

 

「名ばかり管理職」のリスクは、企業規模に関わらず発生します。労働者側からの訴訟が増加傾向にある今、経営者として以下の対策は必須です。

 

対策 1:深夜手当は必ず支払う

 

管理監督者でも、**深夜労働(22時~翌5時)の割増賃金(深夜手当)**の支払い義務は適用されます。支払い漏れがないか、給与計算を徹底的に見直してください。

 

対策 2:権限と待遇を見直し、実態に合わせる

 

  • 権限付与:管理職として扱うのであれば、評価権限や予算執行権など、上記1の要件を満たす**「実質的な権限」**を明確に与え直す。
  • 経済的優遇:役職手当を増額するなど、一般社員が残業しても届かないレベルの待遇に引き上げ、優位性を明確にする。

 

対策 3:健康管理の徹底

 

管理監督者には労働時間規制が適用されなくても、過労死防止の観点から、長時間労働者に対する医師の面接指導義務は適用されます。社員の健康を守ることは企業の義務であり、リスクヘッジにも直結します。


 

まとめ

 

労働基準法は、従業員の健康と権利を守るための最低基準です。経営者様が「管理監督者」の規定を安易に解釈し、時間外労働の規制逃れに利用することは、従業員の信頼を失うだけでなく、企業の存続に関わるほどの法的・経済的リスクを招きます。

「うちの会社は大丈夫か?」と少しでも不安に感じられたら、労働問題に精通した社会保険労務士や弁護士に相談し、早急に労務環境の適正化を図ることを強くお勧めします。適切な運用こそが、法令遵守と従業員のモチベーション向上、ひいては企業価値の向上に繋がります。

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