労働時間

労働時間とは

労働時間とは

労働時間とは労働者に労働義務がある時間です。この労働義務があると言うことについていくつかの異なった解釈があり様々な労働問題の発生原因になっています。事業主としてはなるべくこの振れ幅を無くし働きやすい会社にしていくことが求められます。労働者としては決められたルールに則り仕事をすることが求められます。

労働時間は何時間か

法定労働時間

2018年1月現在一般的な会社の基本的な労働時間は労働基準法で一日8時間、1週間40時間以内と定められています。この、労働基準法で定められた労働時間を法定労働時間と言います。

法定労働時間は1日8時間、1週間40時間

週の法定労働時間が40時間では無い場合

特例事業(商業、映画・演劇業、保健衛生業、および接客娯楽業)で常時10人未満の労働者を使用する場合、特例として法定労働時間が週44時間までとされています。(労働基準法施行規則25条の2)
一つの事業で複数の事業所がある場合、事業所単位で適用されます。ただし、労働時間管理がそれぞれの事業所で独立して行われていなければなりません。

このの判断を誤ると、後々、監督署から指導を受け未払い残業代として多額の出費を強いられることになります。自分に都合のいい解釈をせずに社労士、監督署に相談してください。

具体的にはこんな事業所です。

①商業 (小売り、卸売り、倉庫、理美容、駐車場、不動産管理、出版などの事業)

②映画・演劇業 (作品を見せる映画館、劇場のことです。撮影や編集の事業ではありません)

③保健衛生業 (診療所、老人ホーム、保育園、福祉施設、銭湯など)

④接客娯楽業 (飲食店、ホテル、パチンコ、ゴルフ場、遊園地など)

例として、一つの医療法人が2つの診療所を経営しておりA診療所では医師以下6人の勤務者がおり、B診療所では同じく7人の勤務者が居る場合、法人全体としては13人となりますが、AおよびBのそれぞれの診療所ではそれぞれ6人、7人となりそれぞれの診療所でおのおの労働時間管理をしている場合は特例事業となるが、法人全体として管理している場合は13人と成り、特例事業には該当しないことになります。

また、常時9人で回している高齢者向け洋品店が年金支給の時期だけアルバイトを3人雇用した場合はどうなるのか等、難しい場合が多々あります。

 

所定労働時間

所定労働時間とは会社と労働者の間で就業規則や労働契約書で定めた労働時間のことです。所定労働時間は、法定労働時間を超えることはできません。法定労働時間を超えた所定労働時間はその超えた部分は残業時間と見なされます。法定労働時間より短い所定労働時間は有効です。

休憩時間は労働時間では有りません。

休憩時間は自由に利用することができる限り労働時間には当たりません。しかし、電話番等で自由に利用できない場合は労働時間と見なされる場合もあります。

実際の例

実際に9時から17時まで休憩12時から13時までの1時間で勤務した場合の労働時間は7時間となります。

 

所定労働時間と法定労働時間

所定労働時間と法定労働時間

法定労働時間は法律で定められた労働時間

法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間で、1日8時間以内、1週間に40時間以内と定められています。また、1日6時間以上の場合は45分間、8時間以上の場合は1時間以上の休憩を取ることも義務づけられています。

これらは、最低条件であって、実際の労働時間は事業所ごとに定めなくてはなりません。時間外労働(残業など)や休日出勤を行わせる場合は、労使協定の締結と労働基準監督署への届け出が必須です。

所定労働時間とは企業ごとに定める労働時間

所定労働時間とは、企業ごとに定めた労働時間のことです。企業は法定労働時間の範囲内で自由にその所定労働時間を定めることができます。

所定労働時間は、人材の定着率にも大きく影響します。給与が同じであっても、所定労働時間の長さによって、働く人の負担が変わるからです。長時間労働が行われれば、労働者のケガや病気につながる可能性が高まり、負担が大きければ、人材の確保に影響を及ぼすことは容易に想像できます。
労働時間は実務上どんなときに必要になってくるのか具体例を見てみましょう。

月の平均所定労働時間を計算するのは残業代の計算

労務管理のなかでも残業代を計算する上で、月平均の所定労働時間は重要です。平均で求める理由は、月によって労働日数が変わるからです。残業代を計算するときに月ごとに所定労働時間が変わらなくてもいいように、平均で考える必要があります。

年間の所定労働時間を計算しよう

月の平均の所定労働時間を算出するには、まず年間の所定労働時間を計算します。年間の所定労働時間は、1年の日数から年間休日を引いたものに、1日の所定労働時間をかけて算出します。例えば、年間休日日数が115日なら、365から115を引くので、250日となります。所定労働時間が8時間だった場合、250に8をかけて、2000時間となります。

年間の所定労働時間を計算したら、その数字を月数である12で割ると、月の平均所定労働時間が算出できます。前述の例では、2000時間を12カ月で割るので、月の平均所定労働時間は166.6となります。

所定労働時間と残業との関係

企業によって、所定労働時間と法定労働時間が異なる場合もあるでしょう。法定労働時間は8時間ですが、所定労働時間は7時間という場合です。もし、このような場合で社員が8時間の労働をしたら、差にあたる1時間は、残業扱いになるのでしょうか?これは、会社の方針で変わります。残業代は割増賃金に相当しますし、残業の定め方によって給与も変わります。

例えば、「法定労働時間以上の労働を残業と定める」としていた場合は、8時間を超えない場合、「残業扱い」にはなりません。しかし、「所定労働時間以上であれば残業と定める」としていた場合は、1時間分の割増賃金が支払われます。

こうした方針は、就業規則や雇用契約書にきちんと記載しなくてはなりません。

月平均所定労働時間とは

所定労働時間とは、会社が定める労働時間のことです。

月平均所定労働時間とは、1年間の合計の所定労働時間を、12(1年の月数)で割り、1か月あたりの平均の所定労働時間を算出したものです。1年の中には、31日まである月もあれば、30日や28日までしかない月もあります。各月の残業代の計算方法にバラツキが生じないようにするため、「月平均」という考え方を用います。

月平均所定労働時間は、以下の計算式によって算出します。

なお、以下の計算式の「(365日−1年間の休日合計日数)×1日の所定労働時間」で算出した時間のことを、年間所定労働時間と呼びます。

この年間所定労働時間を12で割ったものが、月平均所定労働時間になります。

月平均所定労働時間の計算式

月平均所定労働時間 365日(※)−1年間の休日合計日数)×1日の所定労働時間数÷12か月

※うるう年は、366日として計算

例えば、「1日の所定労働時間が8時間、年間260日勤務(休日105日)」の会社の場合(中小企業に多い)、

(365日−105日)×8時間=2080時間・・・・・年間所定労働時間

2080時間÷12か月=約173時間・・・・・月平均所定労働時間となります。

つまり、この例のような会社では、残業代計算の際の月平均所定労働時間は、173時間となります。

例2

これが、例えば、「1日の所定労働時間が7時間、年間245日勤務(休日120日)」の会社の場合(大企業に多い)では、

(365日−120日)×7時間=1715時間・・・・・年間所定労働時間

1715時間÷12か月=約142時間・・・・・月平均所定労働時間となります。

ここで、

残業代 (基準内賃金/月所定労働時間)×残業時間×割増率

で計算されるので基準内賃金、割増率、時間外労働時間が同じである場合、月平均所定労働時間が多い会社ほど、残業代(残業1時間あたりの単価)は少なくなり、月平均所定労働時間が少ない会社ほど、残業代は多くなる仕組みとなっています。

会社外での営業の場合の労働時間の把握方法

会社外での営業の際の労働時間の把握方法

事業場外みなし労働時間制

会社外での営業の際の労働時間は使用者が直接管理することができません。労働者の自主的申告や事業場外みなし労働時間制を利用するのが一般的でした。
私が社会人になった頃は携帯電話というものがありませんでしたから、朝「行ってきます。」と会社を出てしまえば、何をやっているかはわかりません。夜8時になって帰社すればその間は労働していたことになります。それでは会社の負担は際限なく上がってしまいます。そこで、事業所外みなし労働時間という制度が当時考え出されました。その当時は合理的であったと思います事業場外みなし労働時間制とは、外回りなどで会社内にいない時間の労働について「◯時間」労働したものとみなす制度です。

例えば、前述のように1日中外回りをしている営業職の場合、事業場外のみなし労働時間を「8時間」とみなした場合、実際の労働時間が7時間でも9時間でも8時間働いたとみなし、賃金が支払われます。

しかし、この制度はあくまで労働者が事業場内にいないなどのため、使用者が具体的な指揮監督ができず、労働時間を算定することが困難な場合のための制度であって、使用者が労働時間を把握できる場合はその把握した時間により賃金が支払われます。

時は流れて、携帯電話などの通信機器の発達により、会社が外に出ている労働者の行動を把握することや指揮監督すること十分可能になっています。故に、この「事業所外みなし労働時間」を適用することは難しいのでは無いかと私は思っています。

 

まとめ

使用者は、労働時間の把握義務を負っていますので、何らかの方法で労働時間を管理し、時間外労働の時間も含めて把握する必要があります。労働基準法上の労働時間の意味について、最高裁は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」としています。この「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」とは、現実に労働力を提供している時間、だけでなく実際に使用者の黙示の指示によって、その業務に従事する時間も含むものと考えられています。(「実労働時間」といいます。)

通信機器が発達した現代では、労働時間の把握は容易になってきていますのでこのみなし労働時間制を適用するのはかなり慎重に判断する必要があると思います。

在宅勤務の労働時間管理に関する私見

在宅勤務の労働時間管理

在宅勤務に関してはネットに接続できる環境さえあれば、十分可能でパソコンやテレビ電話により会社に出勤するのと同様の作業環境を整えられる企業は多数存在します。後は在宅勤務する側の資質の問題であると考えられるので「見なし労働時間」を適用するのは事業所外勤務の場合と同様に芳しくは無いと思います。あくまで私の意見であって皆さんの会社で適用するのは自由です(しかし、その後問題が発生する可能性は十分あると思います)。参考までに在宅ワークに見なし労働時間制を適用する場合の要件は次のように定められています。

在宅労働のみなし労働時間制(テレワークQ&A(厚生労働省発行より)

①労働者が事業場外で業務に従事し、かつ労働時間の計算が困難な場合には、みなし時間により労働時間を計算できる場合があります。
②みなしの対象となるのは所定労働時間が原則ですが、所定時間を超えて労働することが通常必要となる場合には、そのような通常必要となる時間がみなし時間となります一定の要件とは次の3点の要件を全て満たした場合です。

① テレワークが、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
② テレワークで使用しているパソコンが使用者の指示により常時通信可能な状態となっていないこと
・「パソコンが使用者の指示」とは、労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することについて、使用者から認められていない状態をいいます。
・「通信可能な状態」とは、使用者が労働者に対して、パソコンなどの情報通信機器を用いて電子メール、電子掲示板などにより随時具体的な指示を行うことが可能であり、かつ、使用者からの具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態、すなわち、労働者が具体的な指示に備えて待機している手待ち状態で待機しているか、または、待機しつつ実作業を行っている状態をいいます。
これ以外の状態、例えば、単に回線が接続されているだけで、従業員がパソコンから離れることが自由である場合などは、「通信可能な状態」には該当しません。

③ テレワークが、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
・「随時使用者の具体的な指示に基づいて行われる」には、例えば、テレワークの目的、目標、期限などの基本的事項を指示することや、これらの基本的事項について変更を指示することは含まれません。

古い先生の指導では(先生が古いという意味では無く古い時代の指導という意味です)裁量労働制と見なし労働時間制を組み合わせればいいというものが多数見受けられますが、それらは、最近のIT分野での発達が考慮されていません。本人への信頼を前提に、「 電話、メール等で常時使用者の指揮命令を受けながら労働させ、業務記録を記録、報告させる 」 というのが、最新の運用方法であると思われます。言い換えれば、本人が信用できないならば、在宅勤務制は採用するべきではないという事になります。在宅勤務でも残業時間を含めた労働時間を把握することは必要です。安全衛生の観点からも必ず把握するようにしてください

社内旅行・運動会などの社内行事の労働時間管理

参加強制の社内行事は労働時間

社内行事が労働時間となるかどうかについては、「使用者の指揮命令下」に有るかどうかが問題となり、完全自由参加であり不参加の場合にも何らペナルティがない場合は労働時間にはなりません。

一方、事実上強制となる社内行事や社内旅行の場合、その時間は労働時間となり賃金が発生します。こうした行事は業務のある平日ではなく休日に行われることが多いと思われるので、時間外手当や休日手当にも注意が必要です。

強制的に参加させていい根拠。

使用者には「業務命令権」という権利があり、社内行事への「参加強制」もこの「業務命令権」の一環としてであれば、会社が社員に対して行うことができます。
業務時間内の社内行事に対して、参加を強制されたケースでは、この「業務命令権」により参加を強制された場合にはしたがわなければなりません。当然、賃金も通常どおり支払われます。

同様に考えて、業務時間外の社内行事に対しては参加強制を、適法に行うためには業務の一環(すなわち「残業」)として行う必要があります。

参加したくないにもかかわらず、社内行事やイベントに参加を強制されたのであれば、これはすなわち、会社の指揮監督下に置かれていることになります。したがって、参加強制をされた社内行事は、「労働時間」です。参加強制されていなければそれは労働時間ではありません。参加せずともいいのです。

参加強制には直接的強制と間接的強制の2つの場合があります。

  • 会社からの命令で、絶対に参加するよう言われている。(直接的強制)
  • 「自由参加」だが、不参加だと賃金を控除されたりする。(間接的強制)
  • 「自由参加」だが、参加しないと注意されるなどパワハラの標的になる。(間接的強制)
  • 「自由参加」だが、参加しないと無視されるなど職場いじめがある。(間接的強制)
  • 「自由参加」だが、不参加だと「協調性がない」といわれ、協調性不足という人事評価をされる。(間接的強制)
  • 社内行事、イベントの幹事、実行委員会などに指名され、欠席できない。(間接的強制)

建前だけ「自由参加」としていても強制参加と見なされる場合があることに注意しましょう。参加を強制した場合には業務と見なされ賃金が発生します。

健康診断の種類と労働時間

健康診断には2種類ある

健康診断には大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断があります。一般健康診断とは、職種に関係なく、労働者の雇入れ時と、雇入れ後1年以内ごとに一回、定期的に行う健康診断です。特殊健康診断とは、法定の有害業務に従事する労働者が受ける健康診断です。一般健康診断は、一般的な健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものですので、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。特殊健康診断は業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断ですので、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要です。

1 一般健康診断(安衛法第66条第1項)

安衛法に規定されている健康診断で、労働者の一般的な健康診断です。健康的で快適な職業生活を送るためにも必要なもので、特別な内容ではありません。雇入れ時の健康診断や、1年以内に1回以上の受診が必要な定期健康診断は、この一般健康診断に分類されます。

2特殊健康診断

2-1 有害業務の特殊健康診断(法第66条第2項)

安衛法やじん肺法に規定されている特定の有害業務に従事する労働者を対象とする健康診断です。業務に関連する健康に与える影響の状況や程度を調べたり確認したりするために必要なものです。

2-2 有害業務の歯科医師による健康診断(法第66条第3項)

歯またはその支持組織に有害なガス、蒸気、粉じんを発散する場所での業務に常時従事する労働者を対象に実施します。

2-3 通達による特殊健康診断

業務の種類によって、法令に規定されている健康診断とは別の健康診断として必要とされるものです。強制的なものではありませんが、必要な人には受診させておくべきです。

健康診断は業務時間に行うべきか?

これらの健康診断を労働時間内に受診するべきなのか、あるいは、労働時間外に受診すべきか?という点について考えてみましょう。それには、次のような通達が出ています。

健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払い(昭和47年9月18日、基発第602号)

健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般を対象とする一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施を義務づけたものであり、業務遂行との関連において行われるものでは無いので、その受診に要した時間については、当然に事業者の負担するべきものではなく、労使協議して決めるべきものであるが、労働者の健康の確保は事業の円滑な運営に不可欠な条件であることを考えるとその受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが、望ましい。

特殊健康診断は事業の遂行に絡んで当然に実施しなければならない性格のものでありそれは所定労働時間内に行われることを原則とする。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行われた場合には、当然割り増し賃金を支払わなければならない。

健康診断に要した時間の考え方

この通達を簡単に言い換えてみます。

1 一般健康診断

一般健康診断は、労働者の職種やその業種には関係なく実施されるもので、雇入れ時健康診断と定期健康診断が代表的なものです。一般健康診断は、一般的な健康の保持と確保を目的としたもので、使用者には健康診断の実施義務があります。

しかし、業務との直接の関連はないので受診時間を業務時間内にするか、業務時間外にするかはそれぞれの会社の労使間で決めることになっています。「当然には事業者が負担すべきものではなく」というのは、会社が賃金を支払わなければいけないのではないということです。しかし、会社には健康診断の実施義務があるのですから、業務時間内に実施する、もしくは賃金を与える事が望ましいと思います。また、健康を確保し保持することは、会社を正常に運営する為にも必要なことですから、それに要した時間に賃金を払う方が適切と考えられます。

2 特殊健康診断

危険または有害な業務として法で定められている職業には特殊健康診断が必要で、事業主の責任で当然に実施すべきものです。

一般健康診断とは違い、特殊健康診断は業務を遂行する上で必要な健康診断で、所定労働時間内に行うことが前提です。ですから、業務時間外に行ったとしても、賃金(割増賃金)の支払いが必要です。

管理監督者や裁量労働制の労働者の労働時間管理

管理監督者、完全月給制の者、裁量労働制の適用者などは労働時間の管理をしなくても良いのか

働き方改革により労働時間の把握は義務化へ

今回、労働基準法ではなく、労働安全衛生法の施行規則(安衛則)の改正で労働時間の適正把握の法制化が予定されています。

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を守り快適な作業環境を確保することを目的とした法律で、労働基準監督官が臨検監督で確認や指導を行う主要法令の一つです。この法律において、「労働時間の把握」が使用者(企業)の”義務”であると明記されることになりました。

厚生労働省発行のガイドラインによると

現状(2018年6月現在)では、厚生労働省発行の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で、主に以下のポイントが明記されています。

・使用者(事業主)は労働者の働いた時間を把握する

・参加義務のある研修や教育訓練、業務に必要な学習も全て「労働時間」とみなす

・使用者は労働者の仕事の始まりと終わりの時間を明確に把握・記録する

・機器やシステム使っての”客観的な記録”が基礎。労働者自らも確認をする

・自己申告制にする場合はガイドライン遵守及び十分な説明を行う

・自己申告とシステムで記録された労働時間に大きな差が出た場合は実態調査を実施する

・使用者は労働者ごとに労働時間・日数、時間外、休日、深夜労働の時間を適正に記録する

こうしてみると、当然のことばかりと思う方もいらっしゃるかもしれません。それにもかかわらず、サービス残業や持ち帰り残業などが横行しています。

労働時間の把握はなぜ必要

労働時間の適正把握は、賃金計算トラブルやサービス残業(未払い残業代)の予防・解決の面からも必要ですが、長時間労働による健康障害の防止の観点からも大変重要です。

例えば、「管理監督者」は労働基準法第41条で労働時間、休日及び休憩に関する規定の適用対象外となっており、管理監督者が残業を行なっても労基法上の時間外労働手当を支払う義務は無く、逆に遅刻・早退しても賃金控除されることはありません。その一方で長時間労働が続けば健康が害される可能性が高まります。そうしたリスクを避ける為、毎日の厳格な出退勤時刻の管理は出来ませんが、通常どれぐらいの勤務時間になっているのかといった勤務実態の掌握や必要に応じた指導は事業者として当然に行なわなければならないということです。

万が一、過労死や過労自殺が生じた場合には、管理監督者であることを理由に企業責任が免れることが出来るわけではなく、多額の損害賠償につながります。「労働基準法で労働時間に関する規定の適用対象外である」からといって「長時間労働による健康障害防止の必要性」が無いわけでは無いのです。

全ての労働者について、少なくともタイムカードなどの客観的な記録に基づく労働時間管理を行うようにしましょう。

最近では、勤怠管理は紙やタイムカードでの管理から、ICTを活用した勤怠管理システムを利用するのが主流となってきています。現在企業向けに提供されている勤怠管理システムのサービスは無数にありますが、どれもそれぞれの特徴があるため、業種や会社の規模などにより最適なものが異なります。