働き方改革を考える

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

中小企業の働き方改革

現状の週40時間労働ですら、やっとの思いで実施している。あるいは実施出来ていない、中小企業の経営者にとって働き方改革は、頭の痛い問題となっています。長時間労働の上限時間規制や有給休暇の取得義務、同一労働同一賃金、中小企業への時間外労働の割増賃金率猶予措置の廃止等々。

中小企業においてなかなか働き方改革が進まない理由は、「人員に余裕がない」「やりかたが分からない」「効果が分からない」などとなっています。
中小企業では、長時間労働は当たり前、納期に間に合わせるための残業は日常茶飯事、有休を取られたら仕事が回らない、といった会社も多数存在しています。つまり、適切な労務管理に取り組む余裕がなく、ノウハウも持ち合わせていないのです。

何をやったらいいかわからない中小企業の皆さん、「就業規則はきちんと機能していますか」就業規則をきちんと見直して、現在の法律にあったものにするだけで働き方の変化は十分に期待出来ます。それを運用していく上で、自分の会社ではどこができてどこができないのかを見極め、少しずつでも理想に近づけていく。そんな取り組み方もあります。

ここからは個別内容を少し見てみましょう。

1.時間外労働の上限規制

なんといっても、労働時間(残業規制)は働き方改革の1丁目1番地出有ります。もちろんそれだけでは無いのですが、メンタルヘルスやワークライフバランスと言ったことにもかかわってきますし、過労死(過労自殺)撲滅といった観点からも、最大の改革事項だと思います。

労働時間の原則

適用除外として明示されている事業を除いては、労働時間は一日8時間、1週間に40時間です。この、法定労働時間を超えて労働させる場合には36協定という労使協定を締結して監督署に届け出る必要があります。36協定を結んでも限度時間を超えて労働させることはできません。

時間外労働の上限

36協定で定めることができる時間外労働時間には上限が定められており1週間で15時間2週間で27時間1ヶ月で45時間1年間で360時間などかなり細かく定められています。しかもこれは、告示により明示されているもので上限を超えても罰則等はありません。それを今回は法律に明記することにより強制力を持たせ罰則も定める予定です。

このように、通常の場合は年間時間外労働時間は360時間と定められていますが、36協定に特別条項をつけて労使協定を締結すれば突発的事項などに対応するために1年間の半分まで(つまり6回まで)限度時間を超えていいことになっています。

今後はこの特別条項をつけても上限が720時間とされるようです。720時間とは恒常的に60時間では無くあくまで年6回まで45時間を超えて良い。ということには変わりありません。

の処遇の改善(賃金など)

2.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

「仕事ぶりや能力の評価に納得して、意欲を持って働きたい。」これは、働く人の正直な気持ちでは無いでしょうか。

また、<働き方改革に関する総理と現場との意見交換会で寄せられた声>には、「正社員と同じ待遇で働くことは、仕事に対しても同じものを求められている。その責任を、しっかりと果たしたいと思いました。」(同一労働同一賃金適用企業で働く女性)
「頑張ったら頑張った分だけお給料にも跳ね返ってきます。頑張ってみようかなと思いました。」(パートから有期契約を経て正社員として働く女性)といったものが多く寄せられています。

同一労働同一賃金の実現は労働時間改革と並んで今回の「働き方改革」の大きな目玉です。その目的は正規雇用社員と非正規雇用社員の格差をなくす。というこのところの一連の労働法関連の改正の流れに沿ったものです。今回の計画案の提示されているガイドラインでは基本給はおろか昇給、賞与、各種手当てはもちろん福利厚生や教育訓練まで会社に対する貢献が同じであれば同一の、違いがあるならそれに応じた処遇を求めています。それでは、違いがあっても問題の無い場合とはどのようなケースでしょうか

賃金に違いをつけても問題の無いケースとは

職務内容にそれなりの違いがあれば賃金が違っても問題はありません。これまでも当然に認められています。現行法制ではガイドラインとして、

  • 業務内容が同一かどうか
  • 与えられている権限の範囲がどうか
  • 求められる成果
  • 緊急時に求められる対応の程度業務において求められている役割
  • 転勤の有無
  • 職務内容の変更(いわゆる配置転換)の有無
  • その他

を考慮するものとされています。

労働者に対する待遇に関する説明の義務化

現行制度では、短時間労働者に対しては特定の事項の明示義務があります。しかし、正社員との待遇の差については義務にはなっていません。また、有期労働者についてはそのような説明義務はありません。それに対して、改革後は短時間労働者および有期労働者が説明を求めた場合は再社員との待遇差について説明する義務が課される予定です。また、説明を求めたことに対して不利益取り扱いを禁止される予定です。これはとりもなおさず、従業員の待遇については明確に説明できるようにしておく必要があると言うことになります。

派遣労働者に関しても、均等待遇が求められますが、いろいろな矛盾がありまだまだ紆余曲折があるものと思われますのでここでは割愛させていただきます。

5 .柔軟な働き方がしやすい環境整備(テレワーク、副業)

勤務間インターバル

勤務間インターバルとはきんむしゅうりょうごいっていのきゅうそくじかんをもうけることをいい、EUでは24時間につき連続して11時間の休息wpもうけることが義務づけられています。我が国においても4月より助成金を出して制度の定着に取り組んでいます。今回の計画案でも、導入を事業者の努力義務とすることになっています。努力義務なので現時点で必ず対応しなくてもかまいませんが、長時間労働対策労働者の健康対策などに有用であると考えられますので、今のうちから制度の研究をしておく必要はあると思います。

テレワーク

テレワークとは時間や場所の制約を受けない働き方で、働く場所によって在宅勤務、サテライトオフィス勤務などと呼ばれています。テレワークでは働く場所が会社に限定されなくなるため、通勤時間が減少する、育児介護をしながらの労働が容易などの良い点があります。労働時間の管理が難しくなります。個別の事態についてみていくことはここではしませんが、仕事中にほんの数分あるいは数10分育児時間や介護時間が発生する場合の扱いをどうするか、テレワーク中の移動時間はどうか?また、情報セキュリテイの店から問題となることも十分考えられます。ある調査によると「テレワークを実施したい30.1%」と確かにニーズはあるものの、まだまだ課題は多いと思われます。こちらも政府から導入助成金が出ています。

副業

副業を希望する就業者約368万人。いると言われています。副業については原則容認となる方向で進んでいますが、現行制度のまま副業を容認することは多少の問題を含んでいます。

副業は大きく分けて2つのタイプに分けられます。一つはダブルワーク型副業で零細企業では今でもよく見られるタイプで、社会保険や労働時間管理の点から問題があります。政府は副業、兼業することにより人手不足の解消に一役買わせるつもりでしょうが、全く面識の無い事業主同士で労働時間管理を通算するとか現実的にできるのでしょうか?

もう一つは、フリーランスタイプで、趣味を生かしたサイトを立ち上げて物品販売をしたり、休日に各種講演の講師をしたりする場合です。こちらは労務管理業の問題はほとんど無いといえます。

その他の働き方改革

以下は「働き方改革実行計画(案)」に示された項目のみを列挙します。

キャリアの構築

<働き方改革に関する総理と現場との意見交換会で寄せられた声>

ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて、多様な仕事を選択したい。
・「人は、幾つからでも、どんな状況からでも、再出発できる。子育ての経験をしたからこそ、今の職場で活かせることがたくさんある。」(専業主婦からリカレント教育を経て再就職した女性)

・若者が転職しようと思う理由「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」2009年37.1%→2013年40.6%

・病気治療、子育て・介護などと仕事を、無理なく両立したい。
・病気を抱える労働者の就業希望92.5%
・出産後も仕事を続けたい女性65.1%
・介護を理由とした離職者等年10万人
・社会人の学び直し希望49.4%
・65歳超でも働きたい高齢者65.9%家庭の経済事情に関わらず、希望する教育を受けたい。
・高校卒業後の4年制大学進学率(両親年収)400万円以下31.4%( 〃)1000万円超62.4%

6 .女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備

7 .病気の治療と仕事の両立

8 .子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労

9 .雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援

10.誰にでもチャンスのある教育環境の整備

11.高齢者の就業促進

12.外国人材の受入れ

13.10 年先の未来を見据えたロードマップ

まとめ

働き方改革実行案を見てきました。ここでは助成金が出ているものと、重要であると思われるものを中心に簡単に解説しましたが、働き方改革の優先順位は各企業によってまちまちです。各社それぞれの働き方改革を着実に実施していくことが新規採用や業績の向上に結びつくと思われます。

追伸、何からやっていいかわからない場合は「時間外労働の上限規制」そもそも残業などしていないという会社は「同一労働同一賃金」や「非正規と正規雇用の待遇均一化」などに取り組むのがいいと思います。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*