労働法を理解するためには法律同士の関係を理解しなくてはなりません。労働関係の基本の法律である労働基準法そこから派生して労災保険法、雇用保険法、安全衛生法などの法律があります。そして、企業独自に定めているものとして、労働組合と話し合いで決める「労働協約」会社で働く人を包括して定める「就業規則」個別の労働条件を定める「雇用契約」などが有ります。ここではそれらの関係性について理解します。
このページの内容
法令、労働協約、就業規則、労働契約の関係
法令とは
法令はすべてに決まりの最低限度の基準を定めます。従って、これに反する決まりはすべて無効となります。たとえば、労基法で一日の労働時間は8時間以内と定められていますので、8時間を超える労働時間を定めた、労働協約、就業規則、雇用契約などはすべて無効になります。(当該部分のみ)
労働協約とは
法令の次に強い効力を持つものは労働協約です。労働協約とは使用者と労働組合との間で結ばれるものです。従って、労働組合に加入していない人については、労働組合法17条(一般的拘束力:一つの事業場に常時使用される同様の業務に従事する労働者の4分の3以上が一つの労働協約の適用を受けるときは、組合に加入していない同様の業務に従事する労働者にも適用される)および18条(地域的一般的拘束力)が適用されない限り、その労働協約は適用されません。その場合は後述する就業規則、労働契約等の規定が適用されます。労働協約には法令に反する内容を定めることはできません。(その部分は無効になります)
労働協約は、「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する」ものであり、「書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印すること」によって効力が生じます。この有効期間の上限は3年です。
就業規則とは
その次には就業規則が効力を持ちます。就業規則には、法令および労働協約に反する内容を定めることができません。(その部分は無効となります)。
常時使用する労働者数が10名以上の場合は就業規則を定めて、届け出る義務があります。10名未満の場合は作成・届出の義務はありませんが、会社秩序の保持等を考えると作成しておいた方が得策です。
雇用契約書と労働条件通知書
記載すべき内容には差違はありません。雇用契約書は契約なので使用者および労働者の両方の署名が必要ですが、労働条件通知書には使用者が一方的に通知するものなので、使用者のみでかまいません。
具体的に雇用契約書等を作成する際に必要な項目が、次の10項目です。その他の項目は任意で記載してかまいません。
- 契約期間・・労働期間の定めがあるか無いかについて。有期の場合の更新条件。
- 就業場所・・勤務する場所(事業所等)。
- 業務内容・・働く内容(職種)。
- 始業と終業の時刻
- 休憩時間
- 交替制について
- 休日
- 有給休暇
- 賃金・・給与の締め日、給与支払日、計算方法(月給・日給・時給)と支払い方法
- 退職・・退職する際の申し出の方法(口頭・書面)と時期、解雇になる要件
これに加えて有期労働者の場合は
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口について
について記載する必要があります。