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労働者の健康診断は事業主の義務
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるとき、および、1年以内ごとに1回、定期に医師による健康診断を行う義務があります。前者を雇い入れ時健康診断、後者を定期健康診断といいます。
常時使用する労働者とは
パート労働者等の短時間労働者が「常時使用する労働者」に該当するか否かについては、平成19年10月1日基発第1001016号通達で示されています。
その中で、一般健康診断を実施すべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の(1)と(2)のいずれの要件をも満たす場合としています。
(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)
(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。
上記(1)と(2)のどちらも満たす場合、常時使用する労働者となります。
なお、上記の(2)に該当しない場合であっても、上記の(1)に該当し、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。なお、労働者派遣事業法に基づく派遣労働者についての一般健康診断は、労働者の派遣元の事業場で実施し、有害業務従事労働者についての健康診断は派遣先の事業場で実施することとなります。
特定業務従事者の健康診断
特に危険な労働に従事する労働者は6カ月に1回健康診断を行う必要があります。
以下の業務が列挙されています。
※1: 労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務
イ多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ異常気圧下における業務
ヘさく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト重量物の取扱い等重激な業務
チボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ坑内における業務
ヌ深夜業を含む業務
ル水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カその他厚生労働大臣が定める業務
労働者の義務
労働者も会社が行う健康診断を受ける必要があります。ただし、例えば主治医がいてその主治医に健康診断をしてもらう場合のように、会社の指定する医師以外の医師の健康診断を受ける事も可能ですが、その場合には労働者はその結果を書面にしたものを会社に提出しなければなりません。
健康診断実施後に会社が行うべきこと
健康診断後に会社は、次の6つのことを行う必要があります。
健康診断個人票の作成
会社は健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成しなければなりません。健康診断個人票の保存義務は5年間です。( 安衛法第66条の3)
厚生労働省にダウンロードできる書式があります。
定期健康診断結果報告書の提出
常時50人以上の労働者がいる事業場では、定期健康診断を行った場合は、遅滞なく、所轄の労働基準監督署に定期健康診断結果報告書を提出しなければなりません。( 安衛法第100条)
こちらも厚生労働省にダウンロードできる書式があります。
定期健康診断結果報告書を出す場合、産業医以外のところで健康診断を受けた場合も、結果報告書に必要な記名押印は産業医のものである必要があります。
医師等からの意見聴取
健康診断の結果に基づき、健康診断の項目に異常の所見のある労働者について、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません。( 安衛法第66条の4)
健康診断の結果の労働者への通知
健康診断の結果は労働者へ通知しなければなりません。( 安衛法第66条の6)
健康診断実施後の措置
事業主は医師又は歯科医師の意見を勘案し必要があると認めるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。(安衛法第66条の5 )
健康診断の結果に基づく保健指導
健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。( 安衛法第66条の7)
産業医のいない規模の事業所
厚生労働省の管轄の独立行政法人に労働者健康安全機構というものがあり「地域産業保健センター」を設けています。法的に産業医の選任が必要の無い「常時労働者数50人未満」事業所では地域産業保健センターを利用できるので、そちらを活用しましょう。
この「地域産業保健センター」以下のサービスを無料で提供しています。
- 労働者の健康管理(メンタルヘルスを含む)に係る相談
- 健康診断の結果についての医師からの意見聴取
- 長時間労働者に対する面接指導
- 小規模事業場への個別訪問による産業保健指導の実施