社会保険の手続きはご自分ですることができます。なれないことですから失敗や時間がかかってしまうことは仕方有りません。このページでは少しでもご自分で社会保険の加入手続きをする方のストレスを減らせるように詳細かつ丁寧に解説をしていきます。時間の節約をしたい方や、少額なら負担出来るので専門家に頼みたいという方は社会保険労務士に依頼するという方法もあります。なお、社会保険の加入手続きは税理士や行政書士などといった社会保険労務士以外の先生はすることができません。
1.社会保険とは
我々社労士仲間では社会保険と言えば「年金保険」と「健康保険」を言います。(これを狭義の社会保険と言います。)そして、「雇用保険」と「労災保険」はといいますと労働保険と呼びます。一般社会では社会保険とはこれら全部を含めたものを社会保険と言います。(広義の社会保険といいます。)
広義の社会保険の例としては、
求人票や求人広告に「社会保険完備」と有りますが、この場合は労災保険、雇用保険、厚生年金保険、健康保険が適用される事業所である。すなわち、社員として雇用されれば、これらの保険に加入することになります。もちろん個々の保険にはそれぞれに適用条件がありますのでそれに合致することが必要ですが、正社員の場合はほぼ当てはまると考えていいでしょう。
2.社会保険は必ず入らなければいけないのか?(適用事業所)
法人企業であれば必ず加入しなければいけないと考えておいて間違いないでしょう。個人事業主の場合は「健康保険」と「厚生年金」については事業主を含めて5人未満の場合は加入義務はありませんが、任意加入することはできます。
加入していないことが発覚した場合、悪質であると見なされれば、「6ヶ月未満の懲役または50万円以下の罰金」が課せられることになります。それに加えて未加入期間の保険料は2年前にさかのぼり一度に全額徴収されます。だいたい保険料総額は従業員の給料の20%程度になります。人件費が1億円の会社であれば2000万円×2年分=4000万円が待ったなしで徴収されます。これが原因で倒産するといった笑えない例もあるほどです。未加入に対する行政の締め付けは年々厳しくなっています。建設業などでは、見積もりに社会保険料を記載することが標準になっています。「どうにかして保険加入を回避出来ないか?」などと言うことは考えないで、その分の時間を全うに稼ぐ方法を考える時間に充てましょう。
3.被保険者の要件
3-1労災保険
たとえパートやアルバイトでも雇用されれば被保険者となります。特に資格取得の届け出で等は必要ありません。保険料は全額事業主負担となります。雇用されていない人(社長や役員)は被保険者とはなりません。それらの人のために特別加入という制度があります。
3-2雇用保険
様々な被保険者の種類がありますが、ここでは一般被保険者となる人を紹介します。被保険者の資格取得の届け出でが必要です。保険料は労使で折半となります。
雇用保険の一般被保険者となる労働者は次の条件に当てはまる人です。
- 週所定労働時間が40時間以上の労働者
- 週所定労働時間が20時間以上40時間未満の場合は1年を超えて雇用される見込みである労働者。
従って、週所定労働時間が20時間未満の場合は被保険者にはなりません。
(一般被保険者以外の被保険者には日雇い労働被保険者や短期雇用特例被保険者などがあります。また、雇用条件によっては適用除外となる人もいます。)
3-3健康保険
適用事業所(法人の事業所および常時5人以上の労働者を使用する個人事業所)に使用される労働者は適用除外に該当しない限り、国籍・性別・年齢・賃金の額などに関係なく被保険者となります。
健康保険の適用除外
- 船員保険の被保険者
- 所在地が一定しない事業所に使用される人
- 国民健康保険組合の事業所に使用される人
- 健康保険の保険者、共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人
- 後期高齢者医療の被保険者となる人(75歳以上の人または65歳以上~74歳以下の一定程度の障害状態にある人
3-4厚生年金
厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常時使用される70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者となります。
試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められることとなります。
パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となります。
パートタイマーが被保険者となる要件
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上である方は被保険者とされます。
また、一般社員の所定労働時間および所定労働日数が4分の3未満であっても、下記の5要件を全て満たす方は、被保険者になります。
1.週の所定労働時間が20時間以上あること
2.雇用期間が1年以上見込まれること
3.賃金の月額が8.8万円以上であること
4.学生でないこと
5.常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること
厚生年金の適用除外
厚生年金保険の被保険者とされない人は、次表のとおりですが、一定期間を超え雇用される場合は、「常時使用される」ものとみなされ、被保険者となります。
被保険者とされない人 | 被保険者となる場合 |
日々雇い入れられる人 | 1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。 |
2か月以内の期間を定めて使用される人 | 所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。 |
所在地が一定しない事業所に使用される人 | いかなる場合も被保険者とならない。 |
季節的業務(4か月以内)に使用される人 | 継続して4か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。 |
臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人 | 継続して6か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。 |
4.まとめ
会社設立時に行う社会保険の手続きは、会社にかかわる手続き(労働保険保険関係成立届け、雇用保険適用事業所設置届け、健康保険・厚生年金新規適用届け)と被保険者に関する手続き(雇用保険被保険者資格取得届け、健康保険・厚生年金被保険者資格取得届け、健康保険・厚生年金被扶養者異動届)があります。このページでは新規適用の要件と被保険者となるための要件についてお話ししました。次回は、具体的書類の書き方についてお話しします。