srotaka

労働時間とそうで無いものの実際例

労働時間になるもの

労働時間に算入されるものは、裁判所の判例の積み重ねによって明示されています。判例では労働時間は「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。」とされています。

すなわち、労働契約や就業規則に労働時間は9:00~18:00と定められていても、使用者の指揮命令下に置かれている時間かどうかという事が問題になってきます。

以下では、実際に労働時間に該当する作業について説明します。

始業前の準備、終業後の片付け

本来の業務の準備作業や後片付けについて、事業所内で行うことが使用者によって義務づけられている場合や現実に不可欠である場合には、原則として使用者の指揮命令下に置かれたものとされ、労働基準法上の労働時間に該当すると判断しています。

原材料や製品の整理整頓、機械の点検調整等、本来の作業に必要な準備作業、作業終了後の後始末、商店等における開店準備、閉店後の片付け等に要する時間は、特に使用者の指示命令がなくても本来の義務に付随して発生するものですから、労働時間に算入されるべきです。

これらの時間が労働時間に含まれるかどうかの判断は、
(1) 使用者の命令があるかどうか
(2) 当該作業を行うために必然的なもの、あるいは通常必要とされるものであるかどうか
(3) 法令で義務づけられているかどうか
などの点から検討される必要があります。

着替え

作業開始前の着替えの時間について、使用者から事業所内において行うことを義務づけられている場合などは、使用者の指揮命令下に置かれたものとされ、社会通念上必要と認められるものについては労働時間に該当すると判断しています。

使用者から義務付けられた作業服や保護具の着脱等に要した時間について、労働者が就業を命じられた業務の準備行為と認めて、これを労働基準法上の労働時間としています(三菱重工長崎造船所事件 最高裁 平12.3.9)。

一般的な更衣時間は、任意のものであれば労働時間とする必要はありませんが、あらかじめ義務付けられている制服の着脱時間や安全具の装着時間は逐一指揮命令されていなくても、一定の強制力がある場合には労働時間に含まれると解されます。

法令に義務付けられていない制服などの更衣時間については、労働時間に含めるか否かは、「就業規則に定めがあればその定めに従い、その定めがない場合には職場慣行によって決めるのが妥当(日野自動車工業事件 最高裁第一小法廷判決 昭59.10.18)とされています。

就業規則に、『始業時刻の前に着替え等を済ませておいて、始業時刻に勤務ができるように準備をしておくこと』まで規定した場合は、着替えの時間も労働時間とみなされます。制服の更衣などの時間については、どのように取り扱うのか、就業規則等で規定しておくのも労働紛争防止策の一つです。

手待ち時間

手待ち時間とは、使用者からの命令があればただちに業務に就くことができる態勢で待機している時間のことをいい、具体的には以下のような時間のことを指します。
労働基準法では、一定の時間を超えて働く労働者に対して、労働時間の途中に休憩時間を与えなければならないことが定められています。手待ち時間については、それが休憩時間なのか労働時間なのかという点が問題となります。

1.店員が顧客を待っている時間

過去の判例では、勤務時間中の客の途切れた時などを見計って適宜休憩してよいとされている時間について、いわゆる手待ち時間であって休憩時間ではなく、労働時間に当たると判断しています。

2.夜間の仮眠時間

こちらも過去の判例で、「24時間勤務の途中に与えられる連続8時間の「仮眠時間」は、労働からの解放が保障された休憩時間とはいえず、実作業のない時間も含め、全体として使用者の指揮命令下にあるというべきであり、労働基準法上の労働時間に当たる」として、仮眠時間が労働時間であると認められています。

仮眠時間はいわゆる不活動時間ですが、労働から離れることが保障されていないと判断される場合、つまり何かあった場合にただちに相当の対応をしなければならないような状況下にあるときは、労働時間に該当します。

ビル管理会社の従業員が管理・警備業務の途中に与えられる夜間の仮眠時間も、仮眠場所が制約されることや、仮眠中も突発事態への対応を義務づけられていることを理由に、労働時間に当たるとする判例があります(大星ビル管理事件 最高裁 平14.2.28)

3.電話番の時間

昼休み中に電話番や来客対応をさせることについて、厚生労働省は「明らかに業務とみなされる」として、労働時間に含まれると示しています。

「昼休み当番」として、従業員が交替で昼休みの電話番と来客応対をしていて、この「昼休み当番」の時は自席で昼食をとっているという場合、昼休み時間中事務所内にいることが義務づけられており、電話や来客があった場合にはこれらに対応しなければならないため、「手待時間」として労働時間となります。この場合は休憩時間を他に与えなければなりません。なお、その際は、法第34条第2項ただし書による労使協定を締結しなければなりません。(昭和23年4月7日 基収1196号、昭和63年3月14日 基発150号、平成11年3月31日 基発168号)

4.物品の運搬・運送

出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合は、使用者の指揮監督下にあるといえますので、労働時間に含むものと考えられます。

貨物取扱の事業場で貨物の積み込み係が貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合は、手待時間ですから労働時間に含むものと考えられます。

運転手が2名乗り込んで交互に運転にあたる場合に、運転しない者が助手席で休息し、又は仮眠している場合は手待時間ですから、労働時間に含むものと考えられます。労働時間が8時間を越えれば、割増の残業代も支払わなければなりません。

時間外労働の黙認

従業員の自己判断で残業をしても、事後承認が慣行となっている場合は、格別の理由がない限り時間外労働として扱わなければなりません。

勉強会・研修

勉強会や研修に参加している時間についても、労働時間として認められる場合があります。過去の判例では、労働者が月に1~2回程度、少なくとも20分以上を費やして開催される研修会に参加していた時間を時間外労働時間であると認め、会社に対して割増賃金を支払う義務があると判断しています。

勉強会や研修については、参加が義務づけられている・欠席による罰則などがある・出席しなければ業務に最低限度必要な知識が習得できない、といった場合には、労働時間として認められる可能性があるといえます。

参加が義務づけられている研修等は労働時間となります。

例えば、業務命令で休日に行われる合宿研修は、勤務扱いをしなければなりません。休日に労働させていることになるからです。研修終了後に振替休日を与えるか、休日労働として35%増しの割増賃金の支払いが必要となります。

安全衛生教育の時間

法に基づく安全衛生教育については、労働時間内に行うのを原則とします。労働時間と解されますので、法定労働時間外に行われた場合には時間外労働になり、割増賃金を支給しなければなりません。

健康診断

健康診断に関しては、厚生労働省が公式の見解を示しています。これによると、職種に関係なく定期的に行う「一般健康診断」は、業務遂行との直接の関連において行われるものではないことから、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきとしつつ、受診に要した時間の賃金を支払うことが望ましいとされています。

なお、法定の有害業務に従事する労働者が受ける「特殊健康診断」は、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断であることから、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間に該当し、賃金の支払いが必要であるとされています。

始業前の朝礼

使用者の指揮命令によるか否かで判断されることになります。

朝礼で点呼をとったり、当日の仕事の流れを説明するような場合は強制参加であるため、労働時間となります。

強制ではないが、朝礼への参加状況が人事考課に関係する場合も労働時間と判断されます。

帰宅後の呼び出し

労働に中断があっても、1日につき8時間を超える場合は時間外労働になります。

そのための往復の通勤の時間は、労働基準法上は通常の通勤時間と同一のものとして労働時間には該当しないものと解されます。往復の通勤の時間賃金の支払いは不要です。

有給休暇中に緊急の呼び出しで出勤したという場合、原則、有給は取得しなかったものとして扱われ、通常の出勤日となります。賃金も労働時間に対して支払うことになります。

労働時間とみなされない時間

以下のような作業に要する時間については、労働時間とみなされないため注意が必要です。

通勤

通勤自体は働くために必要な作業となりますが、通勤時間は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」としては判断されません。

タイムカードの打刻

事業場に入ってから、タイムカード等の置いてある所まで行くのに要する時間は、労働時間には入りません。(三晃印刷事件 東京地裁 平成9.03.13)

法令に義務付けられていない制服などの更衣時間

法令に義務付けられていない制服などの更衣時間については、労働時間に含めるか否かは、「就業規則に定めがあればその定めに従い、その定めがない場合には職場慣行によって決めるのが妥当」(日野自動車工業事件 最高裁 昭59.10.18)とされています。作業するために不可欠なものであっても、働くための準備行為なので労働力そのものではないので、更衣時間については原則として労働時間に含めません。

朝の掃除、準備

従業員が自主的に掃除などをしている場合は、本人の自発的な行動とみなされ、労働時間にはなりません。

始業前の掃除やお湯を沸かしたりすることを命じられていたり、当番制によって事実上強制になっている場合で、黙示の業務命令があるとみなされた場合は労働時間となります。

始業10分前の出勤を指示された場合

「使用者の指揮命令下にあって労働力を提供している時間」にあたるかどうかにかかってきます。「実際に働いているかどうか」ということで、拘束力が弱く業務を行っていない場合は、指揮命令下にあって労働力を提供しているとは言えず、早出とみなされる可能性は低いと思われます。

朝礼、ミーティング等で、参加が義務づけられている場合には労働時間となり、早出として時間外手当を支払う必要があります。

始業前のラジオ体操

「参加は従業員に強く奨励されていたが、義務付けられていたということはできない」として、労働時間として認めなかった判例があります(住友電気工業事件 大阪地裁 昭58.8.25)。

休憩時間・始業・終業時刻の前後の自由時間

使用者の拘束下にありますが、労務提供のための指揮命令は受けておらず、労働から解放されているため、労働時間になりません。

自発的な残業

原則として、自発的に行なう残業については、労働時間として取り扱う必要はありません。残業は、使用者の業務命令があって初めて生ずるものだからです。

明確な業務命令がなかったとしても、残業を行なう労働者を黙認していた場合などは、黙示の指示があったものとして労働時間となります。

持ち帰り残業

持ち帰り残業とは、書類を自宅に持ち帰ったり、メールでデータを自宅のパソコンに送信しておいて、自宅で仕事(残業)を行なうことですが、自発的に行なう場合は原則として労働時間にはなりません。

作業後の入浴

労働安全衛生規則では、「事業者は身体または被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身もしくはうがいの設備、更衣設備または洗濯のための設備を設けなければならない」ことを定めています。ただし、入浴時間などについての規定はなく、入浴時間については使用者の指揮命令下にあるとはいえないと解されています。
厚生労働省の通知では、坑内労働者の入浴時間について、通常労働時間に算入されないと示されています。

一般健康診断の受診時間

従業員一般に対して行われる一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないため、受診のために要した時間は労働時間として扱わなくても差し支えありません。

特定の有害な業務に従事する労働者について行われる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで実施されなければならない性格のものです。実施に要する時間は労働時間と解されます。

就業時間外の教育訓練

使用者が実施する教育に参加することについて、出席の強制がなく、自由参加のものであれば時間外労働にはなりません。このあたりのことを、就業規則には明確に定めておくとよいでしょう。

昇進・昇格試験を休日に実施した場合は、休日出勤にはなりません。報酬などの向上を目指すための昇格試験なので、労働時間とはみなされないのです。

受験しなかったときに給料の減額などの受講者にとって不利益な措置があるときは、労働時間とみなされます。

休日の接待ゴルフ

原則として休日労働とはなりません。

本人はプレーせず、コンペの準備や進行、送迎等の接待の任務をもって参加する担当者の場合は、それが使用者の命令によるものであり、かつ主たる業務として行なわれる限り労働時間となります。なお、開催が平日であれば、通常の労働時間として扱ってよいでしょう。

出張の移動時間

出張先への移動時間については通勤時間と同様に、その間は、会社の指揮・監督下にあるわけではなく、労働時間では無いとする見方が有力です。裁判例には、「出張の際の往復に要する時間は労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがって時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」とするものがあります(横浜地裁判決昭和49年1月26日)。つまり、移動時間中に、特に具体的な業務を命じられておらず、労働者が自由に活動できる状態にあれば、労働時間とはならないと解されます。
ただし、一度会社に立寄ってから向かう場合や、出張先から会社へ戻る場合にあっては、その時間は労働時間にあたると一般的には解されています。たとえば、営業で取引先をまわる場合などが想定されるでしょう。
また、出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合には、使用者の指揮監督下にあるといえますので、労働時間に含まれると考えます。上司が同行しての出張の場合にも、会社の指揮・監督下にあるとして、労働時間にあたると解されています。
なお、労働基準法38条の2で「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と規定されており、通勤途上による寄り道で、その時間の把握が困難な場合には、原則として所定労働時間(みなし時間)とし、時間外労働として扱わなくてもよいとされます。たとえば、弁護士の業務を例にとれば、朝裁判所に寄ってから事務所に行くという場合には、仮に就業開始時刻より早く裁判所に寄ったとしても、時間外労働と扱われないことになります。

出張中の休日に移動のため旅行する場合は、特段の指示がない限り労働時間に含める必要がないとされます(昭和23年3月17日 基発461 昭和33年2月13日 基発90号)。しかし、何らかの手当を支給するなどの方法で報いるのが良いと考えます。

自宅待機をさせた場合

場所的には自宅に拘束されるものの、その時間は自由に利用できます。事業場で使用者の指揮監督のもとに拘束される手待ち時間とは異なるものと考えられます。自宅待機の時間を「労働時間」とみなす必要はありません。

自宅待機について、賃金を支払いの定めはありません。しかし、休日に待機命令を行うことは、強制力をもって行うことには問題があり、労働時間とはならず、その手当も宿日直手当程度(平均賃金の3分の1)が相当と思われます。
休日に業務遂行を前提として会社に「待機」させる場合は、待機時間は労働時間となりますが、非常のときに備えて待機するだけのときは「日直」と扱うこともできます。宿日直手当程度(平均賃金の3分の1)が相当でしょう。

時間外労働とは

時間外労働とは?

まず、「時間外労働はどこからか」という問いに対して、答えは「時間外労働は原則として、法定労働時間を超えて働いた時間」のことを言います。

法定労働時間とは?

では、法定労働時間とはどんな時間でしょう?法定労働時間とは、国で決めた労働時間のことで、「1日8時間、1週間40時間」と決まっています。
1日8時間×週5日勤務の土日休みの会社が多いのはこのためです。

ですから、7時間勤務が4日(28時間)+6時間勤務が2日(12時間)の週に6日勤務でも週40時間を超えていないので問題ありません

もう一つ労働時間には所定労働時間というものがあります。

所定労働時間は法定労働時間内で決定される

会社は、法定労働時間の範囲内で所定労働時間を定めることができます。所定労働時間とは、会社独自で法定労働時間内に出勤時間と退勤時間を決めまたものです。例えば所定労働時間が1日7時間の会社で8時間働いたとしても、週40時間の労働時間に収まれば時間外労働にはならないのです。(法内残業と言います)

時間外労働の例

もう一度言いますが、時間外労働は法定労働時間を超えた時間のことを言います。(但し、会社によっては所定労働時間を超えた時間数を残業時間とするように就業規則で定めている場合もあります。)下記は法定労働時間を超えた場合を残業時間としたときの例です。

法定労働時間 所定労働時間 実労働時間 残業時間
1(*1)
5(*2)
合計 40 40 46

*1 1日の労働時間限度8時間を超えた分が残業時間
*2 1週間の労働時間が40時間を超えた分(6時間)から各日の残業時間の合計(金曜日1時間)を引いた分が残業時間

法定労働時間

法定労働時間は1日最大8時間。1週間で合計40時間までとなっています。

所定労働時間

月~金が7時間労働で、土曜に5時間労働の1週間で合計40時間の所定労働時間の会社があったとします。

実労働時間&時間外労働

実労働時間のように働いたとします。月曜日は所定労働時間は超えていますが、法定労働時間内の8時間の労働時間です。なので、時間外労働にはなりません。

木曜日は、所定労働時間も超えて法定労働時間も超えています。ここで、時間外労働を判断する基準は所定労働時間ではなく、法定労働時間から超えた労働時間になります。

土曜日は、所定労働時間で5時間と設けられています。しかし、所定労働時間を超えてから時間外労働になるのではなく、法定労働時間の1週間40時間を超えた時点で時間外労働となってきます。ここが注意が必要です。1日で判断すると0時間になってしまいます。

ここで示した時間外労働となる労働時間の考え方が適用されない場合に注意

変形労働時間制を採用している事業所では、この例は適用できません。

 

割増賃金(残業代)の計算に含まれない賃金がある

割り増し賃金の計算の基礎となる賃金とは

なぜ割増賃金を支払う必要があるのか

使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。(労働基準法第37条第1項・第4項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)労働基準法では労働時間は一日8時間、1週間に40時間以内と定められていますが、労使協定を結べばそれ以上の時間労働させることができます。その際に、罰則的な意味合いを含めて割増賃金の支払いが必要であると定めています。

割増賃金率

法律で定められている割増賃金率は

  • 時間外労働・・・・・25%以上(1ヶ月60時間を超えるときは50%以上(*1))
  • 休日労働・・・・・・35%以上
  • 深夜労働・・・・・・25%以上

*1中小企業については当分の間25%以上

おわかりのように「以上」なのでこれ以上支給しても良いのです。なかなか余計に出すところはありませんが。時間外労働が休日に行われた場合はそれぞれの割増率を加算して60%以上、深夜時間帯(午後10時から午前5時)の時間帯に行われた場合は50%以上の支払いになります。

割増賃金の計算方法

割増賃金の額は次の計算式により算出します。

割増賃金額=1時間あたりの賃金額×時間数×割増賃金率

1時間あたりの賃金額は次のように計算します。

1時間あたりの賃金額=月の所定賃金額÷1ヶ月の所定労働時間

ここで

1ヶ月の所定労働時間=(365-所定休日数)×1日の所定労働時間÷12(原則)

各月の所定労働時間は労働日数などで変動します。そうすると割増賃金の計算の基礎となる所定労働時間を毎月計算しなければならず、面倒なので1年間を平均したものを計算上使用しています。なので正しくは月平均所定労働時間ということになります。なお、変形労働時間制を採用している場合などは原則通りには行きません。

割増賃金の基礎とならない手当

割増賃金に基礎となるのは所定労働時間の労働に対して支払われるものなので「労働と関係の無い手当」については算入しないことができます。(労働基準法第37条第5項、同施行規則第21条)下記の手当は限定列挙といい、ここにあげられているもの以外はすべて算入しなければなりません。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

なお、1から5の手当については同じ名称であっても算入しないことができるものとできないものがあります。

家族手当

扶養家族の人数またはこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当。の場合は算入除外できます。扶養家族のある労働者に対して家族の人数に応じて支給する場合(妻1万円、子一人5,000円など)は除外することが可能ですが、扶養家族のあるなしにかかわらず「家族手当」という名称で支給される場合は算入しなければなりません。

通勤手当

通勤距離または、実際に通勤に要する費用に応じて算定される場合は、算定から除外できます。通勤定期券に相当する金額を支給する場合は除外されます。が、通勤に要する費用や距離に関係なく一律1日500円支給される場合は算入しなければなりません。

住宅手当

住宅に要する費用に応じて算定される場合は除外できます。賃貸住宅居住者には家賃の一定割合を、持ち家の門にはローンの一定割合を補助する場合は除外できますが、賃貸の者には一律2万円、持ち家の者には一律1万円を支給する場合は除外できません。

 

有給休暇とは

有給休暇の取得を上手に進め企業経営に生かしましょう。

一昔前の経営者には「従業員に休みを与えるなんてもってのほか」とか「うちの会社に有給休暇なんて制度は無い」といった考え方をしている方がいらっしゃいました。まあ、ご自分は寸暇を惜しんで働き、成功してきたのですから、その成功体験に縛られてしまうのも理解できなくは無いですが、有給休暇は法律で認められた労働者の権利で有り、また、休暇をうまく活用することにより心身ともにリフレッシュして効率アップに繋がるといった効果も現在では認められています。

有給休暇はどのような労働者にも必ず与えなければいけないのか

年次有給休暇の権利は労働基準法第39条の所定の要件を満たした労働者に、法律上当然に生ずるものです。そして正規・非正規を問わず所定の日数付与しなければいけません。

年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。従って、病気のためとか理由を限定されることは無く、旅行に行ったり、単に家でぶらぶらしてても、パチンコに行くためでもかまいませんし、そもそも会社に理由を告げる必要はありません。

しかし、後述するように会社には日時をずらしてもらう権利がありますので、その際には、どうしてもこの日でなければならない理由を告げることが必要になるかもしれません。(法的には必要はありませんが、会社で仕事をする以上あまり突っぱねてしまうと後々やりづらくなってしまいますからほどほどにしましょう。)

年次有給休暇の付与要件

年次有給休暇が付与される要件は2つあります。

(1)雇い入れの日から6か月経過していること
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

一般労働者の年次有給休暇

この2つの要件を満たした労働者は、10労働日の年次有給休暇が付与されます。

また、最初に年次有給休暇が付与された日から1年を経過した日に、(2)と同様の要件(最初の年次有給休暇が付与されてから1年間の全労働日の8割以上出勤したこと)を満たせば、11労働日の年次有給休暇が付与されます。
その後同様に要件を満たすことにより、次の表1に示す日数が付与されます。(付与日数は最大20日まで)

条件を満たさなかった場合(出勤率が8割以下)その年は有給休暇を付与されませんが、翌年条件を満たせば1日プラスした日数が付与されます。
例:今年12日有給休暇をを付与されていたが病気をして、出勤率が8割に満たなかった場合、翌年は有給休暇はありません(本来は14日)が、その年に8割以上出勤すれば、その翌年(2年後)には16日が付与されます。(表1参照)

表1:一般の労働者(週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上の労働者、又は1年間の所定労働日数が217日以上の労働者)の年次有給休暇付与日数

雇入れの日から起算した勤続期間 付与される休暇の日数
6か月 10労働日
1年6か月 11労働日
2年6か月 12労働日
3年6か月 14労働日
4年6か月 16労働日
5年6か月 18労働日
6年6か月以上 20労働日

パートやアルバイトなど労働日数が少ない労働者の年次有給休暇

パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者についても所定の要件(上記の一般の労働者と同じ)を満たせば年次有給暇は付与されます。パートやアルバイトだからといって有給が無いと言うのは誤りです。
ただし、上記の場合よりも少なく、次の表2のとおり比例的に付与されます。

表2:週所定労働時間が30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下、又は1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者の年次有給休暇付与日数。

週所定
労働日数
1年間の所定
労働日数
雇入れ日から起算した継続勤務期間(単位:年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

 

年次有給休暇の時季

年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えなければならないと労働基準法で定められています。使用者は、労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合にのみ、他の時季に年次有給休暇を与えることができますが、年次有給休暇を付与しないとすることはできません。

時季とは聞き慣れない言葉で難しく感じるかもしれませんが、専門用語で日時のことと考えて間違いありません。

出勤率の算定方法(出勤率が8割未満の年は有給を与えなくて良い)

出勤率=出勤した日数÷全労働日

出勤した日とは通常通り出勤して、勤務した日以外に遅刻早退した日も含みます。
全労働日とは、暦日数から所定休日を除いた日です。

また、以下の場合は、出勤したものと見なします。
① 業務上の負傷・疾病による療養のため休業した期間
② 産前産後の女性が産前産後の休業を取った期間
③ 育児休業または介護休業をした期間
④ 年次有給休暇を取得した日

以下の場合は全労働日から除外する必要があります。
① 使用者の責に帰すべき事由による休業の日
②正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日

有給休暇時の賃金と平均賃金

有給休暇取得時の賃金

有給1日につき、平均賃金、もしくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う必要があります。

平均賃金とは

平均賃金は、労働者の生活を保障するためのものですから通常の生活賃金をありのままに算定することを基本とし、原則として事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額をその期間の総日数(暦日数)で除した金額です。(労働基準法第12条)
すなわち、

平均賃金=過去3ヶ月間の賃金総額÷過去3ヶ月間の総日数

平均賃金を算定する場合はどんなときか?

(1)労働者を解雇する場合の予告に代わる解雇予告手当-平均賃金の30日分以上(労基法第20条)
(2)使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当-1日につき平均賃金の6割以上(労基法第26条)
(3)年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金(労基法第39条)
(4)労働者が業務上負傷し、もしくは疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償等(労基法第76条から82条、労災保険法)
※休業補償給付など労災保険給付の額の基礎として用いられる給付基礎日額も原則として平均賃金に相当する額とされています。
(5)減給制裁の制限額-1回の額は平均賃金の半額まで、何回も制裁する際は支払賃金総額の1割まで(労基法第91条)
(6)じん肺管理区分により地方労働局長が作業転換の勧奨または指示を行う際の転換手当- 平均賃金 の30日分または60日分(じん肺法第22条)

算定事由の発生した日とは

(1)解雇予告手当の場合は、労働者に解雇の通告をした日
(2)休業手当・年次有給休暇の賃金の場合は、休業日・年休日(2日以上の期間にわたる場合は、その最初の日)
(3)災害補償の場合は、事故の起きた日または、診断によって疾病が確定した日
(4)減給の制裁の場合は、制裁の意思表示が相手方に到達した日

以前3か月間とは

算定事由の発生した日は含まず、その前日から遡って3か月です。賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から遡って3か月となります。賃金締切日に事由発生した場合は、その前の締切日から遡及します。
なお、次の期間がある場合は、その日数及び賃金額は先の期間および賃金総額から控除します。

(1)業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業した期間
(2)産前産後の休業した期間
(3)使用者の責任によって休業した期間
(4)育児・介護休業期間
(5)試みの使用期間(試用期間)

賃金の総額とは

算定期間中に支払われる、賃金のすべてが含まれます。通勤手当、精皆勤手当、年次有給休暇の賃金、通勤定期券代及び昼食料補助等も含まれ、また、現実に支払われた賃金だけでなく、賃金の支払いが遅れているような場合は、未払い賃金も含めて計算されます。ベースアップの確定している場合も算入し、6か月通勤定期なども1か月ごとに支払われたものと見なして算定します。
なお、次の賃金については賃金総額から控除します。

(1)臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金等)
(2)3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(四半期ごとに支払われる賞与など、賞与であっても3か月ごとに支払われる場合は算入されます)
(3)労働協約で定められていない現物給与

日々雇い入れられる者(日雇労働者)

稼動状態にむらがあり、日によって勤務先を異にすることが多いので、一般常用労働者の場合と区別して以下のように算定します。

日雇労働者の平均賃金

(1)本人に同一事業場で1か月間に支払われた賃金総額÷その間の総労働日数×73/100
(2)(当該事業場で1か月間に働いた同種労働者がいる場合)
同種労働者の賃金総額÷その間の同種労働者の総労働日数×73/100
※1か月間に支払われた賃金総額とは算定事由発生日以前1か月間の賃金額

原則で算定できない場合、原則で算定すると著しく不適当な場合

上記の原則で算定できない特殊な事案については,平均賃金決定申請により都道府県労働局長が決定することとなりますので、所轄の労働基準監督署に相談してください。

所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とは

所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とは、所定労働時間が8時間の場合は「8時間労働した場合に支払われる賃金」のことです。 つまり、時給制の場合は所定労働時間に時給額をかけたものですし、日給月給の場合、1日欠勤した場合に欠勤控除される賃金額がそれに当たります。

平均賃金と所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の違い

両者の違いは、平均賃金には、時間外手当やその他諸手当を含んで算定をする一方、所定労働時間が支払われる通常の賃金では、それらを含まない、ということです。ただし、平均賃金の算定では、過去3ヶ月間の全出勤日数ではなく総歴日数で賃金総額を割るため、どちらの方が金額高くなるかは会社や労働者の働き方によって変わってきます。
どちらで支払うかは就業規則その他これに準ずるものに定めておく必要があります。 また、労使協定を結べば、健康保険法で定められている標準報酬日額(標準報酬月額を30で割ったもの)で、有給分の賃金を支払うこともできます。

有給の計画的付与は有給の5日付与義務化に有効

計画的付与で会社の指定する日に社員に有給を与える

計画的付与とは年次有給休暇の5日を超える部分についてあらかじめ付与日を決めて取得させる制度のことです。(労働基準法39条第5項)計画的付与には、事前に労使協定を結び、就業規則など関連する社内規程の整備が必要ですが、年次有給休暇の取得率を向上させ、労働環境の向上が期待できます。
たとえば、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始といった大きな休みの導入に年次有給休暇の計画的付与が利用されています。この制度は、年休の取得率を高め年間労働日、年間労働時間を短縮することを目的として導入されたものです。
「計画的付与」は労働者各人の付与日数のうち5日を超える部分については「労使協定」を締結すれば、時季を定めて計画的に与えることができます(この協定は、労基署に届け出る必要はありません)。
また、「5日を超える部分」には前年度から繰り越す部分も含めます。つまり前年度と今年度合わせて40日分の有給がある労働者の場合、最大で35日分が計画的付与の対象となります。

計画的付与の方法

計画的付与の方法としては、社員全員に同時期に有給を与える一斉付与、あらかじめ定められたグループごとに与える班別付与、個別に与える個人別付与があります。

事業所全体の一斉付与方式

例えば、ゴールデンウイークの周辺の労働日を計画年休の対象とし、全員一斉に休日するというものです。
この場合、対象となる年休日数のない(少ない)者には、特別の有給休暇を与えるか、少なくとも6割の休業手当(労働基準法26条)を支払う必要があります。

課、班別の交替制方式

労働者を1班と2班に分け、1班は8月1日から5日まで、2班は8月16日から20日までというように、計画年休を振り分け事業所は休業しないという方法です。
事業所は休業とはならないので、上記のような休業手当の必要な者は発生しません。

個人別付与方式

それぞれの労働者に希望を聞き、全体の調整をしたうえで、個人ごとに年休日を指定し、その指定された日に計画年休を取得するものです。

労使協定の内容

(1) 年次有給休暇の計画的付与の時季
(2) 年次有給休暇の計画的付与の対象日数
(3) 年次有給休暇の計画的付与の設定の仕方

  1. 事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日
  2. 班別の交替制付与の場合には、班別の具体的な年次有給休暇の付与日
  3. 年次有給休暇付与計画表による個人別付与の場合には、計画表を作成する時期、手続等(具体的な年次有給休暇の付与はその計画表によって定まることになる。)
(4) やむを得ない特別な事情が生じたときに、付与日の変更を申し入れることを可能とする条件

通常、使用者は年度当初において「年休カレンダー」を作成し、ここに労働者の計画付与日を記入させることによって、その年休日が特定されることになります。
なお、時間単位年休は、個々の労働者に対して時間単位による年休の取得を義務付けるものではなく、労働者が時間単位による取得を請求した場合において、労働者が請求した時季に時間単位により年次有給休暇を与えることができるというものであることから、計画的付与として時間単位年休を与えることは認められません。

計画的付与にあたって考慮すべき事項(確認)

計画的付与の対象から除く者

計画的付与の時季に育児休業や産前産後の休業などに入ることがわかっている者、また、定年などあらかじめ退職することがわかっている者については、労使協定で計画的付与の対象からはずしておきます。
なお、特別の事情により年次有給休暇の付与日があらかじめ定められることが適当でない労働者については、年次有給休暇の計画的付与の労使協定を結ぶ際、計画的付与の対象から除外することも含め、十分労使関係者が考慮するよう指導すること。
(昭和63.1.1 基発1号)

対象となる年次有給休暇の日数

年次有給休暇のうち、少なくとも5日は従業員の自由な取得を保障しなければなりません。したがって、5日を超える日数につき、労使協定に基づき計画的に付与することになります。

計画的付与の効果的活用法

夏季・年末休暇に組み込み、大型連休とする

この方法は、企業若しくは事業場全体の休業による一斉付与方式、班・グループ別の交替制付与方式に多く活用されています。

ブリッジホリデー

暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日間の橋渡しとして計画的付与制度を活用し、連休とします。

アニバーサリー(メモリアル)休暇制度

従業員本人の誕生日や結婚記念日、子どもの誕生日などを休暇とします。あらかじめ日にちが確定しているので、計画的付与も実施しやすくなります。

閑散期に集中させる

業務の比較的閑散な時期に年次有給休暇を計画的に付与するようにし、業務に支障をきたさないようにしながら休暇の取得向上を図ります。

計画的付与が決定したあとで、使用者の都合で時季変更ができるのか?

厚生労働省は、時季変更はできないという見解に立っています。

労使協定による計画的付与において、指定した日に指定された労働者を就労させる必要が生じた場合であっても、計画的付与の場合には第39条第4項の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使できない。

(昭和63.3.14 基発150号)

すなわち、使用者は「請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる」という事情があった場合も、計画された年休の時季を別の時季に代えることができないとされています。

どうしても変更せざるをえない場合は、変更の事由と時季、その理由が信義則に反していないかどうかを検討し、限定的に認めることになるでしょう。

あらかじめ計画的付与日を変更することが予想される場合には、労使協定で計画的付与日を変更する場合の手続きについて定めておきます。

 

複数組合があった場合の取扱い

労基法の規定に基づき、労使協定による年休の取得時季が集団的統一的に特定されると、その日数については、適用対象とされた事業場の全労働者を拘束することになりますが、その協定に反対する少数組合がある場合には、その少数組合員を協定に拘束することが著しく不合理であるような特別の事情があったり、不公正であったりするときは、その効果は少数組合員に及ばないこともあります。(三菱重工業事件 長崎地裁 平成4.3.26)

労働者による変更

労使協定の中に特段の定めがなければ、個別に検討され処理されることになります。

年休の日数が不足する労働者の場合

計画年休に充当する年休日数が不足する労働者の場合については、行政解釈では「付与日数を増やす等の措置が必要」としています(昭和63.1.1 基発1号)
が、こういった措置が講じられない場合は問題が生じます。

たとえば、計画年休が年10日あって工場が休業するのだが、従業員の中には年休から供出できる日数が10日に満たない者がおり、工場が休業している以上、出勤もできない状況に陥るという場合です。

このような労働者の欠勤は、労基法26条に規定する「使用者の責に帰すべき事由」による休業として取り扱われると解されています。
「付与日数を増やす、あるいは、計画的付与の対象外にする等の措置」をとらずに当該労働者を休業させる場合には、労働契約や労働協約、就業規則等に基づき、賃金、手当等の支払を定めているときは、当該労働契約等に基づき当該手当等を支払う必要がありますが、そのような定めがない場合であっても、少なくとも労働基準法第26条の規定による休業手当の支払(平均賃金の100分の60以上)が原則として必要です。

つまり、労働者は使用者に対して、休業手当(平均賃金の100分の60)を請求することができることになります。(昭和63.3.14 基発150号)

計画年休適用期間中に退職する労働者の場合

当該年休は個人年休として与えるよりほかはないと思われます。

したがって、予定された計画年休分を別の時季に指定してきた場合は、使用者はこれを拒めないと解されます。(昭和63.3.14 基発150号)

有給休暇の買い取り

有給休暇の買い取り

会社に長く勤めていると結構有給休暇ってたまってしまいますよね。2年たつと時効で無くなってしまうので買い取ってくれれば労働者側としてもうれしい気もします。ですが、残念なことに有給休暇の買い上げは労働基準法で禁止されているんです。さて、なぜでしょう?どうせ無くなってしまうものを買い取ってもらえるなんて労働者にとってはいいことではないでしょうか。労働基準法は使用者の味方なのでしょうか?

日本の有給休暇の取得状況

エクスペディア・ジャパンによる有給休暇の国際比較調査の結果(2018年12月発表)によると日本は3年連続の最下位(取得率50%程度)日本では有給休暇を取得しきれずに余った状態でいることがわかります。有給休暇の時効は2年ですから、2年間取得できなければ消滅してしまいます。そう考えると有給休暇の買い取りは労働者にとってもメリットがあるように思えます。労働者が会社に有給休暇の買取りを請求した場合、会社はこれに応じる義務はあるのでしょうか。みていきましょう。

有給の買い上げは労働基準法39条違反となります

年次有給休暇の買い上げは法律で禁止されているのはなぜでしょう。そもそも、有給休暇とは本来、労働者が自分の好きな時季に休暇を取ることができるというものです。ただ、せっかく休暇がとれても、その間の給与が支払われないのであれば休暇を取ろうとする労働者もいなくなってしまいます。そのため、休暇をとっても会社は給与を支払いますよ、というのが年次有給休暇というわけです。

つまり、有給休暇とは休暇をとることが主目的であり、その日に給与を支払うのは付随するものなのです。この有給休暇の趣旨に照らしてみれば、有給を買い上げて労働者が休暇を取れなくなってしまうのは、本来の有給の趣旨では無いと言うことが簡単にわかるでしょう。

ここで、有給休暇に関する法律の規定を簡単に再度確認しておきましょう

年次有給休暇は「労働者の疲労回復、健康の維持・増進、その他労働者の福祉向上を図ること」を目的として法律に定められています。(労働基準法第39条)
そして、請求することのできる日から2年間の経過により、時効という制度により請求ができなくなってしまいます。(労働基準法115条)
一例として、労働基準法上では、正社員は勤務開始から全労働日の8割以上出勤していれば、勤務期間が6か月経過した時点で会社に対して年10日間の有給休暇請求権を取得します。しかし、権利を行使せずその日から2年間が経過した場合、その有給休暇請求権は時効により消滅してしまいます。

この後の話のために便宜的に有給休暇を法定有給休暇と任意有給休暇に区別することにします。それぞれの定義は法定有給休暇とは一般に言われている有給休暇で労基法に定められているものを言います。任意有給休暇とは会社によって福利厚生の向上のために定められている有給休暇を言います。

 

法定有給休暇の付与

 

正社員

正社員は、全労働日のうち8割以上出勤することと、一定期間継続して勤務することにより有給休暇が与えられます。具体的には、6か月間の勤務により10日間の有給休暇が与えられ、その後1年継続して勤務する毎に新たに有給休暇が与えられ、しかも毎年その日数が増えるという仕組みになっています。

パート・アルバイト

パートなどの所定労働日数が少ない労働者に対しても、有給休暇は付与されます。この場合は、週の所定労働日数などに応じて有給休暇が付与されることになります。

会社に有給休暇買取りの義務はない

そもそも有給休暇とは、労働者の福祉向上のために有給で休むことを認めた制度に過ぎず、これを消化しなかった場合に会社が買い取らなければならないというものではありません。そのため、会社に有給休暇買取りの義務はありません。

会社からの有給休暇買取りは原則違法だが、そうでない場合もある

買取りを積極的に認めると、会社が有給休暇を買い取り労働者に有給休暇を取得させないという事態が生じ、せっかく法律で労働者の福祉向上を図った意味が失われてしまいます。したがって、会社からの有給休暇の買取りは原則として違法とされています。

会社からの有給休暇買取りが違法ではない場合



買い取りをしても労基法違反にはならないといった意味で、積極的に買い取りをすべし、あるいは労働者には、買い取ってもらう権利があるというわけではありません。

法定有給休暇を超えた分について買い上げる場合

会社による有給休暇の買取りが違法とならない場合として、まず、会社が法律で定められている分を超えて付与している場合が考えられます。

つまり、上記のように法定の有給休暇は年10日間の場合に、年15日間として5日間を上乗せしているような場合、上乗せ分の有給休暇は会社が独自に社員の福利厚生のためにもうけたものです。そのため、これを買い取ることを認めても、法の趣旨に反するものではありません。

会社が独自で与えた有給休暇については、買取りは違法ではありません。その取扱いについて会社の裁量の幅が広いということです。

有給休暇が時効消滅した場合

時効消滅した有給休暇は、買い取ることを認めても労働者の福祉に反するものとは考えられませんので、買い取っても労基法に違反するものではありません。

退職時に未消化有給休暇がある場合

同様に、退職時に未消化有給休暇がある場合は、退職すると未消化有給休暇を消化することができなくなってしまうので、特別に有給休暇を買い取ることが認められています。

買取りに応じる企業は少ない

有給休暇の買取りは原則違法であるので、たとえ適法な範囲であっても違法ではないかという誤解を招きかねません。わざわざ誤解を招くことを避ける方が賢明です。

また、個別に対応することは不公平な状態を招きかねませんので、制度として規定する必要があると考えられますが、文章の書き方次第では違法として指摘を受けることも十分考えられます。わざわざこんな事をしようとする事業主は少ないでしょう。

さらに、世の中の流れとしては有休を消化するように制度化する方向に進んでいます。2019年4月1日からは有給休暇5日は最低取得するように義務づけされました。

以上勘案して、有給買い取りをしてもらうことを狙うよりは取得できる環境を構築してもらうように働きかけましょう。事業主の方は人手不足の折、採用がよりやりやすくなると思われますので、そういった環境を整えアピールしていきましょう。