従業員が退職すると離職票の手続きをしなくてはなりません。たとえ1週間しか勤めて無くても、突然出社しなくなってしまった様な問題社員でも手続きは事業主の義務です。
退職者からすれば、失業保険の手続きでハローワークに行くにも離職票が無いといけませんし、受給するまでには日数がかかるので一日も早く手続きをしたい。つまり、離職票は一日でも早く欲しい。
ところです。
離職票がすぐ届かない理由は手続に時間がかかるため
退職者が出ると、健康保険や年金の資格喪失や源泉徴収票など、いろいろと手続きを行う必要がありますよね。
その一つが、以下の2つの書類を作成してハローワークへ提出する事です。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 雇用保険被保険者離職証明書
これをすることによって、退職者に離職票が届けられ、事業主の義務は終了することになります。
雇用保険被保険者資格喪失届の作成と提出
まず「雇用保険被保険者資格喪失届」という書類を、退職した翌日から10日以内に管轄のハローワークへ提出する決まりになっています。
事業主は雇用する労働者が被保険者でなくなつたことについて、当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届に被保険者でなくなつたことを証明できる書類を添えて管轄の公共職業安定所に提出しなければならない。
雇用保険法施行規則
ちなみに、雇用保険被保険者資格喪失届の書類は資格取得届けを提出したときに発行される資格取得証明書に付属しているのですが、退職時までに紛失している場合も多い。しかし、心配はいりません。ハローワークのサイトからデータをダウンロードできますし、ハローワークに行けばもらえるので会社にストックしている場合も多いです。
雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者離職証明書の作成と提出
離職票を発行するためには「雇用保険被保険者離職証明書」という書類も提出することになります。
この書類は3枚綴りの複写式になっています。複写式なのでハローワークのサイトからダウンロードできません。社内に書類がなければハローワークに取りに行かないといけません。このときに前述の資格喪失証明書も一緒にもらってくるといいですね。後で述べますが、こちらの書類は離職した方が希望しなければ発行する必要はありません。
退職を証明できる書類やタイムカードの準備
さらに添付書類として退職したこと確認できる書類、退職届やタイムカード、労働者名簿などもきちんと取りそろえて同時に送らなければなりません。特に退職届は円満退職で無い場合非常に重要です。離職理由により手当の受給日数も違ってくるので会社も退職者も十分注意する必要があります。
提出書類を整えるのにも手間と時間がかかるものなので計画的に進める必要があります。
事務を専門に行う職員は年々減らされる傾向にあるので、経理を行う人が兼任していたり、社長さんが自ら行うなどなれない人が行うととっても時間がかかってしまいます。
ハローワークと書類のやりとりで時間がかかる
「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を作成できれば、退職届などの添付書類と一緒に管轄のハローワークへ郵送します。午前中にポストへ投函すれば、翌日にはハローワークに届くかもしれませんが、届くまでおおよそ1〜2日はかかるものです。担当者が、自ら持参すれば早く到着しますし、その場で事務処理してもらえますがそういう事業所は少ないと感じます。なぜなら、下手をすると一日つぶれてしまうからです。ハローワークの待ち時間はそれほど長いのです。ちなみに郵送でハローワークに送った場合、実際には窓口優先で処理が行われるため繁忙期には1週間近くハローワークで止まることも珍しくありません。職員は一生懸命やっているのですが、いかんせん業務量が多すぎるのです。窓口では不明なところがあるとその場で事業主に聞き取り調査しますので1社あたり1時間かかることも珍しくありません。
必要書類がハローワークに届けられると、「雇用保険被保険者離職証明書」を元に離職票が作られます。
そしてその離職票が、郵送で会社に届けられるのです。ハローワークから離職票が直接離職者に送られる事はありません。会社から送らねばなりません。
ちなみに会社によっては、社労士事務所に退職の手続きを依頼していることもあると思います。
社労士事務所に依頼した場合(うちの事務所の例)
事前に退職者が出る旨のご連絡をいただくと、必要書類をご指示いたします。同時に後々トラブルにならないように退職理由の確認をいたします。トラブルになりそうな場合は退職者の方から直接聞くこともあります。
準備ができましたら退職日には電子申請で申請書類の送信を行います。今は、おのおののハローワークでは無く専門の事務センターで一括処理をします(東京都、神奈川県などの場合)ので、早ければ翌日には処理が終わり「離職票」、「離職証明書」が送信されてきます。私の事務所で事業主様宛と離職者様宛に分けて「配達記録便」で郵送いたします。
電子申請に対応していない事務所では、会社が行う場合と同じか、あるいはそれ以上の日数がかかります。ワンクッション段階が増えるので当然そうなります。
ちなみに料金は5000円~15000円が相場(ずいぶん幅があるとお思いでしょうが、実際そんなものです)です。高いからといって早くやってくれるわけではありませんし、安いからといって心配する必要も無いでしょう。高くてもだめなところはいっぱいありますし、安くても「早い・安い・確実」なところもあります。
離職票を希望するかどうかを退職前に確認する
「雇用保険被保険者離職証明書」については、退職者が離職票を希望する場合にのみ提出するという決まりになっています。退職者に離職票を希望するか、言い換えれば失業保険の手続きをするかどうかを確認して手続きをしましょう。資格喪失届けだけならたいした作業量ではありませんが、離職証明書はなかなか手間暇のかかる手続き書類です。間違いがあると、退職した方の受給額にもかかわってくるので慎重な作業が求められます。
離職票は2種類発行
ちなみに失業保険の手続きには、離職票1と離職票2の2種類が必要です。
こちらが離職票1の例。PDFが別ページで開きます。
雇用保険の被保険者番号や、いつ会社を退職したのか、どこの会社を辞めたのか、などの情報が記載されています。
念のため、離職票提出前に記載内容に間違いがないか確認しておきましょう。
失業手当の振込口座欄は、後々離職者の方で記入すれば良いです。
離職票2の例。PDFが別ページで開きます。
会社を辞めるまで、賃金がいくら支払われていたか、退職理由は何か、などの情報が記載されています。
賃金について注意が必要なのは、額面給与ではなく交通費なども含めた金額になっているということ。
支払われる金額にも関わってくるため、間違いがないか確認をしておきましょう。
離職票を発行する必要がない人とは
退職時には離職票は必ず必要と思っている方も多いですが、実は離職票が必要でない人もいます。離職票が必要かどうかは確認しましょう。ちなみに、そのときは不要でも、しばらくたってから離職票を発行して欲しいと言われた場合は発行しなくてはなりません。
退職者が次のような理由で退職する場合、離職票を発行する必要はありません。
- 転職先が決まって退職した場合
- 個人事業主として開業や会社を立ち上げる場合
- 退職後に新たに仕事を探さない場合
前職で資格喪失手続きをしていないと雇用した従業員の資格取得手続きができません
わたしが、入社した方の資格取得手続きをしたところ、前職の会社で退職手続き(資格喪失手続き)がすんでいないという理由で資格取得ができないことが何度かありました。退職の仕方がまずいとそうなってしまうのですね。もしこのような状況になってしまったら、当該従業員に前職の会社に連絡を取って手続きを進めてもらいましょう。ハローワークでも手続きを催促してはくれますが・・・
円満退職ではなかった場合や、前職がブラック企業だった場合、退職手続きを適切に行ってもらえない場合があるのでもう一度退職理由を確認してみるのも必要かもしれません。
離職票を紛失したときはハローワークで再発行
万が一離職票を紛失してしまったときも、ハローワークへ行けば再発行してもらえます。本人確認のため写真付きの身分証明書(運転免許証やマイナンバーカード(通知ではありません))が必要です。本人にそう伝えれば会社としては何もすることはありません。